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事件

開店に味をしめた私は次第に学校に行かなくなる。

それと言うのも、将来パチンコで食って行けると自信を持ち始めた時期でも有ったから。

そして常に行動を共にしていたT君とも、ある日を境に暫く会わなくなり単独行動が増え始めた時期でも有った。

毎日開店を回っていると必ずと言っていいほど出会う、数人のグループが居た、

気にはなっていたがコチラから話かけるほど、当時の私は社交的では無かった為ずっと無視をしてた。

だがある日何かを切欠に話をする事になる。

その人物は開店周りを生業とする、開店プロのリーダーであった。

当時30人からの若い集を率いていた彼の名は、鈴木さんと言って面倒見の良い叔父さんの様な人物でした。

その叔父さんに『グループに入らないか?』と声を掛けられ気を良くした私は即答でOKの返事を出した。

その日の内にグループの人達に紹介を受け、メデタク?グループに入る事となった。

グループに入隊すると色々な制約が待ち受けていて、まずは担当エリアを持たされ雨の日も風の日も

エリア内の偵察をしなくては成らなかった。新装開店を見つけると入念に下調べが始まる

(整理券発行するのか?何時開店?新機種は?)等など事細かに、毎日鈴木さんに報告しなくては成らなかった。

その情報を報告すると、翌日の新装開店情報が提供され『何処に何時に待ち合わせて誰と行けと』指示が出る。

その情報を頼りに見知らぬ街へ電車とバスを乗り継ぎ毎日の様に狂った調整の新装巡りを行い、高校生の分際で荒稼ぎしていた。

開店で得た収支は鈴木さんが一旦全員から回収して、皆に均等に配分してくれた?

一部は鈴木さんが必要経費と言って少し多めに取っていたが、メンバー全員に会計報告書の様な物を

公開してくれて居たので、誰も文句は言わなかった。私は稼いだ金をピンハネされてるようで

中々納得出来なかったが、収入が少なかった日にもお金を頂ける事と、

仲間と一緒に楽しい時間を過ごせる事が何より嬉しく納得する様になった。

入隊してからは過去経験した事の無い程のプラスの連続。湯水の如く入ってくるお金は、

とても高校生の使いきれる金額では無かった。それもその筈、鈴木さんは皆から集めた情報を

過去のデーターと照らし合わせその日、最も効率の良い立ち回りを指示していたからで、

今思えば携帯電話が普及していなかった時代にアレだけ統率を取れたリーダーは過去を遡っても見当たらない。

更にコレだけ美味しい開店回りをグループで独占出来る訳も無く、他のグループとバッティングしたが、

ここでも鈴木さんの力は絶大で有った。お互い喧嘩しあうのでは無く、譲れる所は譲って

折り合いを付けグループに吸収。更に自分のグループを巨大化させて行く手法は本当に尊敬していた。

そんなある日スロット『初代アラジン』の開店を巡ってとんでも無いトラブルに巻き込まれる・・・

アラジン


私はグループの数人といつもの様に新装開店の店で場所取りをしていたら、別のグループとバッティングした。

私はいつもの事だから安心していたのだが、事体は想定外の方向へ。開店前にトラブルを起こすと

入場さえ出来なくなる事は当時の開店プロ暗黙のルール。当然別のグループもそれを認識していた為、

彼らは別の入口から入場する方法を取った。彼らの狙いは店員の一瞬の隙を付いてのフライング入場。

コレは私の属しているグループへの完全なる挑戦状?だった(笑)当然、黙って指を加えて居る訳でもなく

オラのグループも密かにそのタイミングを狙っていた・・・

開店の時間が迫るに連れて、現場の緊張感が高まって行く。

まず、フライング入場したのは私達!一瞬送れて向こうが入場!!目的の台の占有率は7対3で私のグループが勝ち。

と、此処までは良かったが相手のグループの数人が台に座れず、暴れだす。

私と一緒に行動していた気性の荒い兄貴分の人がブチ切れ店内騒然…罵声が飛び交う中、

直ぐに鈴木さんが間に入り仲裁、後で話し合いをすると言う形で一旦、事は落ち着く。

閉店後そのグループと話し合いに鈴木さん達は行った。コレがオレの仕事だと言って。

そして鈴木さんは刺された、死ぬレベルでは全く無かったが、相当な出血をしている鈴木さんを見て

私は足が震えた。ビビッタ、心底震えた、恐ろしかった。初めて目の前で血を流す人間をみて涙が止まらなかった。

その日の出来事を切欠に、私はグループの活動には一切顔を出さなくなる。

それと同時にパチンコの世界へ嫌悪感を抱き始め、自宅での引きこもりの生活が始まった。

そんな日々の中、親友のキヨシ君が『たまには学校に来ないか?』と助け舟をだしてくれ学校に行く事を決心した。


【続く】

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